「急に呼び出すとは、一体なのごとじゃ?」
「あっ、ロルフさんだ!」
ルルモアさんに連れられて冒険者ギルドに行くとね、二階にあるお部屋でちょっと待っててねって言われたんだよ。
だから僕、用意してもらったお茶とお菓子を食べながら待ってたんだけど、そしたらロルフさんが入ってきたんだ。
「おや、ルディーン君ではないか。という事は、この呼び出しは君がらみなのじゃな」
ロルフさんはそう言うとね、僕の反対側にある椅子に座ってから何があったの? って聞てきたんだよ。
「わしとギルマスに使いが来たという事は多分魔法か魔道具がらみだとは思うのじゃが、一体なのがあったのかのぉ」
「あのね、クリーンのは魔法は体をきれいにするだけの魔法じゃないよって言ったら、ルルモアさんにここで待っててって言われたんだよ」
だから僕、クリーンの魔法の事をお話したらルルモアさんに連れてこられたんだよって教えてあげたんだ。
そしたらそれを聞いたロルフさんは、あごのお髭をなでながらなるほどのぉって。
「という事は、それ以外にも使い道があるという事じゃな」
「あれ? ロルフさんも体をきれいにする魔法だと思ってたの?」
「うむ。それが広く知られておるクリーンの効果じゃからのぉ」
クリーンの魔法はね、ずーっと前から知られてる有名な魔法なんだって。
だからロルフさんもルルモアさんとおんなじで、体をきれいにする魔法だってずっと思ってたそうなんだよ。
「しかし今の話からすると、また別な……」
でも僕が違う使い方があるって教えてあげたもんだから、それを聞こうと思ったみたいなんだけど、
コンコンコン。
「お待たせして申し訳ありません」
そこでノックの音が聞こえてきて、その後ルルモアさんが冒険者ギルドのお爺さんギルドマスターを連れて入って来たんだ。
「フランセン様、わざわざご足労頂いて申し訳ありません。ところで、錬金術ギルドのギルドマスター様は?」
「ああ、ギルマスなら何か用があるそうでな。遅れてくるとの事じゃ」
ロルフさんたち、急に冒険者ギルドに来てって言われたでしょ?
その時バーリマンさんは錬金術ギルドのお仕事をしてたから、ロルフさんだけが先に来たんだってさ。
「して、何があったのじゃ?」
「はい。実は先ほど、ルディーン君がクリーンの魔法には知られているのとは別な使い方があると言い出したもので」
ルルモアさんはエルフだから、魔法の事を全然知らないって事は無いんだよ。
でも冒険者さんの中には魔法を使える人はあんまりいないし、ルルモアさんも魔法のお勉強をしたわけじゃないからそんなに詳しくは知らないんだって。
それにね、ルルモアさんも冒険者ギルドのお爺さんギルドマスターも魔法が使えないから、僕が言ってる事がほんとかどうかなんて解んないでしょ。
だから魔法が使えるロルフさんとバーリマンさんを呼んだんだってさ。
「なるほど。賢明な判断じゃな」
「恐れ入ります」
「して、その新しい使い方とは、どんなものなのかな?」
ロルフさんがそう聞くとね、ルルモアさんは僕の方を見てこう答えたんだ。
「ルディーン君が言うには、クリーンの魔法はかけた”場所”をきれいにする魔法だと」
「ふむ。ではこの魔法は指定した”物”ではなく、かけた”空間”をきれいにする魔法だというのじゃな。ルディーン君」
ロルフさんはそう言うとね、僕にそうなの? って聞いてきたんだよ。
だから僕、そうだよって頷いたんだ。
「うん、そうだよ」
「なんと。それが本当ならば、確かに大変な発見という事になるな」
「そうなの?」
「はい。我々にとってクリーンの魔法は、自分や他人など、かけた対象の汚れを取る魔法と考えられていたのです」
クリーンの魔法って、クールの魔法とかとおんなじで範囲を指定して使うとその中がきれいになっちゃう魔法でしょ?
でもね、その事を今まではみんな知らなかったんだよってルルモアさんは言うんだ。
「ですが場所にかける事ができるとなると」
「うむ。今までは困難だと思われていた場所でも、魔法での清掃が可能という事になるじゃろうな」
今まではずっと、広い場所をお掃除するにはウォッシュの魔法を使わないとダメって思われてたんだって。
でもあれはいっぱいのお水で汚れを洗い流す魔法だから、普通のいすや机とかがあるお部屋では使えないでしょ?
だからお掃除するのが大変なとこでも、今まではみんなで頑張ってお掃除してたんだよってルルモアさんが教えてくれたんだ。
「特に装飾が施された明かりの魔道具が吊り下げられているダンスホールなどは、天井が他より高くて掃除するのでさえかなりの危険を伴っておりましたからね」
「うむ。その他にも、よそからの使者を迎える部屋などはメイドたちが時間をかけて磨き上げておるからのぉ。じゃが魔法で清掃ができるとなるとかなり楽になるじゃろうな」
僕んちみたいに狭いとこだったらお掃除も簡単だけど、ロルフさんちみたいにおっきなお家だと大変でしょ?
でも今まではウォッシュしかお掃除の魔法が無いって思ってたから、すっごく大変だったんだって。
そっか、だからルルモアさんはあんなに慌てて僕をここまで連れてきたんだね。
「あれ? でもさ、クリーンの魔法はみんな知ってたんだよね? なら、なんで今まで誰もそれに気付かなかったの?」
「それはな、ルディーン君。魔法というものはまず異界の言葉を研究し、呪文を探し出してから実際に唱えてその効果を調べるからのぉ。クリーンが物をきれいにするという意味の言葉だと発見した者が、試しに自分の体に使ってみたらきれいになった事からそういう魔法であると認識されたのじゃろうな」
魔法の呪文って、まず異世界の言葉から意味のあるものを見つけるの自体がすっごく大変でしょ?
それにその効果だって、誰かが教えてくれるわけじゃないからほんとはどんな事ができるのかなんて解んないもん。
ロルフさんはね、この魔法を見つけた人が最初にそんな使い方をしたからみんなそう思ってたんじゃないかなぁって教えてくれたんだよ。
「ほれ、前にクラッシュの魔法で砂糖を細かくできると教えてくれたであろう? あれと同じじゃよ。魔法を知っておるからと言って、皆がその使い方すべてを理解しておるわけではないのじゃ」
「そっか。みんなが知ってる魔法でも、どんなふうに使ったらいいか知らないなんて事もあるんだね」」
ロルフさんが解りやすく教えてくれたもんだから、僕はなんでみんながクリーンの使い方を知らなかったのかが解ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
ルディーン君は前世の記憶があるし、ステータス画面で魔法を詳しく調べる事ができるから本来の使い方だけでなくその応用もできます。
でもこの世界の魔法はというと、女神ビシュナ様がもたらしてくれた異世界の言葉を研究して見つけるから、最初に発見した人が使った効果が一般的になるんですよね。
なので本編でも出て来たクラッシュで砂糖を細かくできるなんて事は思いもしないし、ドライの魔法は生木を乾かして薪にする魔法だと考えられていたりします。
まさにコロンブスの卵、ちょっとした気づきですごく便利になってしまうかもしれないのがこの世界の魔法だったりします。